|
23
Баллыжюри
0
Баллычитателей
Балбес
タニスラヴ・ヴォストコヴ:作
バカモン
『ロワンサン』より
私の村では、殆どの人が犬を飼っていた。ただ一人、ティモフェーヴ商人は犬を持っていなかった。それが休日、店を閉めていた日にモスクワの市場に行き、やっとのことで犬を持ち帰った。しかしそれはいかにも変な見た目の犬であった。
「あら、これは何の犬種なのでしょうか。」
ティモフェーヴが犬と私の庭を通り過ぎようとしたとき、アンナ・ペトロヴナは言った。
「犬種もクソもあるかい。」
ティモフェーヴは手を振って
「とりあえず名前は『バカモン』だ。」
と言った。
「まあいいわ。いい仕事をしてくれるかもしれないし。」
アンナは返した。
「そうだな」
ティモフェーヴは肩をすくめた。
その日の夜、村のみんなが眠りに付いたとき、バカモンは突然恐ろしい声で鳴き始めた。そして、それは朝まで続いた。
朝になるとアンナが真っ先に駆け付けた
「犬をいじめるのはやめなさい。」
「いじめるってなんだ。」
ティモフェーヴは言った
「怖くて眠れないわ。」
アンナは続ける
「俺は何もやっていない。」
「なら。なにか痛いとこでもあるんじゃないの。」
しかしティモフェーヴは言う
「いいや、それはない。さっきスープ一杯食ったんだぞ」
アンナは
「とりあえず、犬いじめるのをやめなかったら即苦情書くわよ。」
とだけ言って帰った。
それから数日同じようなことが続いた。バカモンは毎晩大声で鳴き、朝には誰かがティモフェーヴに怒った。商人はもうそろそろ泣きそうだった。
「そいつを持ち主に返したらどうだ。」
ミトリッチが提案した
「持ち主なんぞどこにおるかわからねえよ。」
「なら獣医につれていけ、君の犬のせいで村の人たちは『慢性的な睡眠不足』とやらになっちまう。」
ティモフェーヴは犬を獣医につれていく他なかった。休みの日ではなかったが、店を閉め、バカモンと電車に乗って町へ行った。彼らが戻ってきたのは夕方だった。
「どうだった。」
ミトリッチは聞いた
ティモフェーヴは眉をひそめた
「やつは健康だ、だが一つ障害があると獣医は言った。」
「お、どんな障害だ。」
「音声だ。あいつは吠えることが無理で鳴くことしかできない。」
ミトリッチは驚いた
「そうだったのか。ならいい、ここに生かしておこう。毎晩のあれは慣れれるかも知れないな。」
バカモンの障害を知った村の人たちは彼を見舞いにきたり、食べ物を分けてあげたりして、毎晩の鳴き声はもう気にならなくなってきた、それは障害でティモフェーヴのせいではないから。
その後こんなことが起きた。三ヶ月経った後、夜、商人の家の反対側にある店に人が二人忍び込んだ。嗅ぎつけたバカモンは以前より遥かに恐ろしい鳴き声を上げた。慣れた村人たちも怖がるものだったから、初めてこんなおとを聞く泥棒たちは言うまでもない。彼らは恐怖のあまり盗むものをすべて置いて逃げた。
これをきっかけにバカモンは村でたいそう親しまれるようになって、分けられる食べ物も増えた。先日の泥棒の件についてきた警察官はバカモンは素晴らしい能力を持っていると言って、是非売っていただけないかと聞いた。
「無理だな。」
とティモフェーヴは答えた。無理もない、なにせこんなに奇妙な障害、音声の障害を持つ犬なんて二匹と存在しないから。
バカモン
『ロワンサン』より
私の村では、殆どの人が犬を飼っていた。ただ一人、ティモフェーヴ商人は犬を持っていなかった。それが休日、店を閉めていた日にモスクワの市場に行き、やっとのことで犬を持ち帰った。しかしそれはいかにも変な見た目の犬であった。
「あら、これは何の犬種なのでしょうか。」
ティモフェーヴが犬と私の庭を通り過ぎようとしたとき、アンナ・ペトロヴナは言った。
「犬種もクソもあるかい。」
ティモフェーヴは手を振って
「とりあえず名前は『バカモン』だ。」
と言った。
「まあいいわ。いい仕事をしてくれるかもしれないし。」
アンナは返した。
「そうだな」
ティモフェーヴは肩をすくめた。
その日の夜、村のみんなが眠りに付いたとき、バカモンは突然恐ろしい声で鳴き始めた。そして、それは朝まで続いた。
朝になるとアンナが真っ先に駆け付けた
「犬をいじめるのはやめなさい。」
「いじめるってなんだ。」
ティモフェーヴは言った
「怖くて眠れないわ。」
アンナは続ける
「俺は何もやっていない。」
「なら。なにか痛いとこでもあるんじゃないの。」
しかしティモフェーヴは言う
「いいや、それはない。さっきスープ一杯食ったんだぞ」
アンナは
「とりあえず、犬いじめるのをやめなかったら即苦情書くわよ。」
とだけ言って帰った。
それから数日同じようなことが続いた。バカモンは毎晩大声で鳴き、朝には誰かがティモフェーヴに怒った。商人はもうそろそろ泣きそうだった。
「そいつを持ち主に返したらどうだ。」
ミトリッチが提案した
「持ち主なんぞどこにおるかわからねえよ。」
「なら獣医につれていけ、君の犬のせいで村の人たちは『慢性的な睡眠不足』とやらになっちまう。」
ティモフェーヴは犬を獣医につれていく他なかった。休みの日ではなかったが、店を閉め、バカモンと電車に乗って町へ行った。彼らが戻ってきたのは夕方だった。
「どうだった。」
ミトリッチは聞いた
ティモフェーヴは眉をひそめた
「やつは健康だ、だが一つ障害があると獣医は言った。」
「お、どんな障害だ。」
「音声だ。あいつは吠えることが無理で鳴くことしかできない。」
ミトリッチは驚いた
「そうだったのか。ならいい、ここに生かしておこう。毎晩のあれは慣れれるかも知れないな。」
バカモンの障害を知った村の人たちは彼を見舞いにきたり、食べ物を分けてあげたりして、毎晩の鳴き声はもう気にならなくなってきた、それは障害でティモフェーヴのせいではないから。
その後こんなことが起きた。三ヶ月経った後、夜、商人の家の反対側にある店に人が二人忍び込んだ。嗅ぎつけたバカモンは以前より遥かに恐ろしい鳴き声を上げた。慣れた村人たちも怖がるものだったから、初めてこんなおとを聞く泥棒たちは言うまでもない。彼らは恐怖のあまり盗むものをすべて置いて逃げた。
これをきっかけにバカモンは村でたいそう親しまれるようになって、分けられる食べ物も増えた。先日の泥棒の件についてきた警察官はバカモンは素晴らしい能力を持っていると言って、是非売っていただけないかと聞いた。
「無理だな。」
とティモフェーヴは答えた。無理もない、なにせこんなに奇妙な障害、音声の障害を持つ犬なんて二匹と存在しないから。